57. ころがる芋になる。
- u
- 9月7日
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更新日:9月14日

鯨やイルカ、一部の渡り鳥などは、長距離を移動しながら生活する上で、脳の半分を交互に休ませながら活動を続ける、半球睡眠という休み方をとっているらしい。
コアラやナマケモノは1日のうち大体20時間くらいを眠って過ごすという。
魚類は、感覚機能や代謝機能を下げて活動量を抑えることで、睡眠のような休息を得ている。完全に眠り込むことはないそうだ。
冬眠や、torpor(トーパー)と呼ばれる休眠方法をとる生きものたちもいる。
エバーフレッシュのように、日が落ちると葉をみんな閉じてしまい、翌朝にはまたゆっくりと開いていく、就眠運動をする植物たちもいる。
夕方になり部屋に差し込む光がわずかになると、窓辺でゆっくりと葉を閉じていく植物。自分以外の何者かがそこで時を刻んでいる様子をじっと見ていると、そろそろ自分も休もうか、とか、今日も一日が終わるなぁ、という気持がじんわりと湧いてくる。
漫然と過ごしていると、自分に必要な休息や、体力・意欲の回復は手に入りにくい。眠れば万事解決、というわけにはいかず、目覚めると、眠る前よりもぐったりと疲れていることだって多々ある。
英語では、switch off(電源を切る) や recharge(再充電する) が、ドイツ語でも同様に abschalten(電源を切る)、seine Batterien wieder aufladen(バッテリーを再充電する)が、比喩的に、インアクティベートして休息モードに入る、再び活気を取り戻す、という意味で用いられることがある。実際は、スイッチひとつで副交感的になれるわけでも、プラグを挿せば元気が回復するわけでもない。
人は、どうやって自分なりの休み方を見つけていくのか。
この問いは、しばらくの間ずっと私の興味を引き続けている。
くつろぐ、ごろごろ・ダラダラするという意味で用いられる言葉に、英語の lounge around や laze around、lie around、lay back、kick back などがある。
around は、うごうごしている感じ、じっと同じ姿勢で固まっているのではなく、「ごろごろ」のように動きのニュアンスがある。back は、背中を中心に身体をゆるく捉えて、壁や背もたれに体重を預けている感じだ。
ボーっとするという意味で、be spaced out や zone out という英熟語もある。うわのそらで、注意力が今ここに向いていない、心ここにあらず感を表す。
どちらも、あえてボーっとしたいときに口にするにはしっくりこないな、と思っているところに、veg out という言葉を見つけた。
テーブルやソファの上にころん、と転がっている vegetable(野菜) のように、という意味合いがあるらしい。ボーっとテレビを見たり、お茶をすすりながら窓の外を眺めたり。couch potato(カウチポテト・ソファのじゃがいも) と似たユーモアを感じる。
同じく out を含む chill out は、くつろぐという意味の熟語のなかでもとりわけよく耳にする言葉だ。クールダウンするという意味から、落ち着かせる・リラックスするという意味になり、今となっては chill(凍らない程度に冷やす) という意味合いはほとんど残っていないように思う。
けれど、暑い日に頭の中がいっぱいになってきたとき、つめたい水に手や足を浸すと、ゆっくりと落ち着いていくのを感じるように、部屋の温度を少し調節すると身体が楽になることがあるように、温度というものは、休みや癒しと結びついている気がする。
「46. あなたの今日の波。( https://x.gd/jzRp6 )」で以前、「relax=re(再び)+laxus(緩む)」と「un+wind(ねじれ+させない)」について紹介した。ドイツ語でも sich entspannen (spannen=張りつめる+ent=〜を取り除く→リラックスする) という表現がある。
ゆるめる、ほどく、ほぐれる、ほころぶ。ぴんと張りすぎた糸。ちぎれそうになる前に、ひどく絡まって解けない瘤になってしまう前に、そっと。
ドイツ語では、"die Seele baumeln lassen(心をぶらぶらさせる)" というユニークなものもある。
baumeln は、脚をぶらぶらさせるときにも用いられるし、Hängematte (ハンモック) に寝そべり揺れ動く様も連想させる。
何もせず、同じ場所でじっとしているよりも、軽く体を動かしたり、掃除をしたりする方が心身ともに軽くなり、リフレッシュできたと感じることがある。
考え事を脇に置いて、五感で一杯の紅茶を味わう時間や、見ていたものから目線を上げて、変わっていく空模様を何の気なしに眺める時間。そういう休憩が必要なときもある。
言葉を知るごとに、そうか、その手があったかと思い出す。
今のあなたには、どんな休み方が思い浮かぶのでしょうか。
ほどよく idling(緩速運転) も入れながら、今日も、それぞれのはやさで。
2025.09.07 u





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