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46. あなたの今日の波。

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  • 2024年12月8日
  • 読了時間: 3分

更新日:2月15日





¿Qué onda? という表現に出会ったのはいつだっただろう。


ケ・オンダと発音されるこの表現は、 "調子はどう?" という意味のカジュアルなスペイン語で、主にメキシコで話されている。直訳すると「どんな波?」になる。


"onda" は、波と同時に vibes(気分・雰囲気・感じ)のニュアンスもあるようで、今の相手の状態にフォーカスした言葉の選び方に心を掴まれる。



「元気?」という何気ない言葉に、いつも笑顔で元気と返せるわけではない。


英語で気さくに用いられる "What's up?" や "What (have) you been up to?" も、相手に今どんなことが起こっているのかを問う表現だ。「最近何してた?」のように、"Doing" に軸足を置いた表現とも違う。


今となっては、形式化したこれらの質問に返事はいらない、という人や、表面的なやりとりだからまともに答えず基本は元気と答える、という意見も耳にする。


それでも、「今あなたの中で何が起こっていますか」と問う表現が日常で飛び交っていることに改めて気づいたとき、もう一度その視点を、その問いを考えてみたくなった。




最近やりとりのなかで同様にはっとしたのは、イタリア語で "Stai tranquilla" と言われたときだ。


tranquillo(-a) は、落ち着いた、静かな、心穏やかな、心配せず難しく考えていない状態のこと。その人は「大丈夫」「気にしないで」という意味で上の言葉をかけてくれた。


静穏、閑静などを意味する言葉が、"Don't worry" "Take it easy" のような気軽さで用いられていることはとても新鮮だ。"心配しない" のとは少し違う。「穏やかでいて」とも訳せるこの言葉が、ありふれた日々の会話に溶け込んでいる。


以前、「21.レイドバックでくつろいだことば」( https://x.gd/0NOib )で書いた、インドネシア語の "Santai saja(ただリラックスして→気を楽に)" を思い出す。





relax という言葉が、ラテン語の re(再び)laxus(緩む)に由来することは以前も書いたけれど、近い意味で、"unwind(アンワインド)" というべつの言葉がある。


wind は、"a winding road(曲がりくねった道)" のように、湾曲して、ねじれていているさまを表す。


un+wind(ねじれ+させない)ことで、寛ぐ、自分を楽な状態にする、という意味になる。


物理的な意味では、毛糸玉を解いたり、首に巻いたマフラーやスカーフを緩めたりする意味もある。




自分自身をほどき、緩め、楽な状態にする。


自分の中で、何が何と絡み合って(intertwined)いるのか。


それは、絡み合っているのか、縒り合っているのか。


解くべきものと、縒り合うことで補完し合うものとがある。


自分の中で起こっていることに耳を澄ませていくと、街の雑踏や日々の移ろいの中に、これまでは聞き取れなかった音を見出せる気がしている。


私は、あなたの今日の波を知りたい。






2024.12.08  u  

 
 
 

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