32. ことばを料理する。
- u
- 2023年8月30日
- 読了時間: 3分
更新日:2月15日
◆数字の世界
kanakolu kumamālua(カナコル クママルア)
ハワイ語で「32」kanakolu(20)kumamā(+)lua(2)=32
7はhiku(ヒク)、8はwalu(ワル)、9はiwa(イヴァ)、10はumi(ウミ)といい、日本語ととても似た音がある。

ドイツ語で、食べ物を温め直すときに aufwärmen という。"die Suppe aufwärmen" といえばスープを温め直すこと。英語でいう warm-up だ。
aufwärmen は、食べ物を鍋や電子レンジや鍋で温め直すこと、スポーツでウォーミングアップをして体を温めることなどを意味する。
auf には up 同様上へという意味合いがあり、wärmen は warm(温かい)が含まれている通り、温めるという意味だ。
「お弁当、温めますか?」と「場を温めておいたよ」という文章が並んでいても不思議ではないのに、べつの言語で書かれた途端に目を引くし、面白い。aufwärmen には、ほかにも比喩的な表現がある。
たとえば、“aufwärmen für Meetings” は、場を温めること、会議初めのアイスブレーキングのこと。日常会話で記憶に残っているのは、初対面の人と初めて電話で話す予定を立てているときに「私は打ち解けるのに時間がかかるタイプでね…」という意味で、"Ich brauche Zeit, um mich aufzuwärmen(自分をウォームアップするのに時間を要する)" という言い方をする人がいたこと。
昔の話、特に喧嘩やネガティブな内容のものを再び現在に引っ張り出すことを日本語で「蒸し返す」というけれど、それに近い意味で aufwärmen を用いることもできるらしい。
話を温め直すこと、話を蒸し返すこと。
電子レンジでチンするのと、蒸し器で火を入れ直すのとではだいぶ印象が変わるだろう。
一方はできたての温度と食感を再現することだし、もう一方からは、蒸気と熱気に包まれたもっちりとした質感、匂い立つ様子が想像できる。
生活に溶け込む、料理のことば。
ドイツ語で「表現する」という意味の ausdrücken には、レモンを絞るときのような、英語でいうsqueeze の意味もある。
汁気を絞り出すという字義が、脳味噌をひねって考えを押し出そうとするイメージを連想させる。新鮮でジューシー、どこか酸味のある印象を覚える。例文としてレモンを挙げたからかもしれない。
日本語にも知恵を絞るという表現があり、見えないものをなんとか捻出しようとする様子がうかがえる。
絞るという日本語には、ほかにも「(油を)絞る」という比喩表現がある。
骨身を削るような厳しい訓練や叱責などに対して、“こってり絞られた” という言葉を耳にする。絞られた油は気力か、体力か、それともべつの何かか。
そこからつい連想したのは、auspressen というドイツ語。pressen には、圧力をかけて押し潰す、搾り出すという意味がある。ちょうど、生搾りジュースが作られるイメージのように。心理的な圧力をかけたり、質問攻めをして困らせたりすることを比喩的に意味する。
「根掘り葉掘り聞く」という意味の ausfragen にも近いと思う。
自分が日本語を勉強している身だと想像すると、「根掘り葉掘り」という言葉の響き、土をせっせと掘り返すようなこの表現もとても愉快に感じる。
あたため直した昔話と絞り出した酸っぱいアイデア。
ぽいぽいと畑から掘り出される情報、頭蓋骨を抜ける脳の換気。
あたらしいことばと一緒に伸びをする、朝。
光る言葉はいつもすぐ側にある。
2023.08.30 u
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